今回は「痛くない」「日焼けOK」「どんな毛でもOK」「バルジ領域」でおなじみの蓄熱式脱毛について解説します。
さて、この「蓄熱式脱毛」
最近できた新しい脱毛なので、様々な情報が飛び交っています。
ウソもあれば、ホントもある。
中にはエステもクリニックも蓄熱式脱毛のことを一緒くたに説明していて、まるで同じものであるかのような説明も見受けられます。
それに加えて、エステとクリニックどちらでも蓄熱式脱毛を扱っているので、ますます違いがわからなくて混乱している人も多いと思います。
ですので、今回はこのような内容でお送りします。
蓄熱式脱毛とは
蓄熱式脱毛とは、メラニンではなく発毛の司令器官であるバルジ領域に作用するのが目的の脱毛をいいます。
バルジ領域が発見されたのは2001年と、脱毛界隈ではごく最近になって発見された部位であり、歴史がとても浅いです。
研究もまだまだ発展途上であるため、過渡期の脱毛技術はどうしても玉石混交というか、ウソもホントも飛び交うのが現状です。
もう少し年数が経つと、本物だけが残ってそれ以外のものは淘汰されていくので、バルジ領域はこれから期待される脱毛分野であると言えるでしょう。
蓄熱式が最新式≠優れている
最近になって発見されたバルジ領域ですが、新しく発見されたからといって従来の脱毛技術よりも優れているとは限りません。
私がクリニックの現場で思うことは、新しい物好きな人ほど蓄熱式を選びたがる傾向にあるということです。
新しい物好きな人はどこにでもいるので無理はないのですし、私たちはどうしても”最新イコール最も優れている”と思いがちですが、新しい技術だからといってもまだ発展途上、冷静な目で考えなければなりません。
エステにおける蓄熱式脱毛
エステで行える脱毛のうち、蓄熱式脱毛に該当するのはSHR式という脱毛になります。
SHRとか言われてもわからないよという人は、エステ脱毛について詳しく解説しているこちらの記事を読んでみてください。きっと理解が深まります。
エステ蓄熱式脱毛の特徴
エステにおける蓄熱式脱毛では、次のような特徴をよく目にします。
- 痛みがない。(無痛脱毛とも)
- やけどしない。
- 毛周期関係なく施術可能
- 日焼けしていてもOK
- ほくろの上もOK
エステの蓄熱式はキセノンタイプ
エステで使用される光源はキセノンランプが多いです。
キセノンとは、気体(ガス)の名前です。
キセノンランプの特徴は、取り込むのはメラニン色素のみで、そのほかの部位には反応しません。
言い換えると、メラニン色素(=肌や毛の黒い部分)にしか反応しない、ということ。。。
あれあれ?ちょっと待ってください。
先ほど
- 毛周期関係なく施術可能
ということを書きましたが、成長期ではない毛(つまり、薄い毛)にも施術可能なのはなぜなのか?
この疑問について、パナソニック電工技報に興味深い文献があったので紹介します。
※パナソニック電工技報とは、開発者自らが記した技術論文、技術解説を紹介する技術成果をまとめた文献
この記事によると、毛周期の異なる黒毛のマウスへのキセノン光照射実験において、成長期の毛が最も効果的な作用が現れることを確認した、との内容が記載されています。
また、同記事内ではキセノンによる脱毛を”脱毛”と表現せず、”抑毛”という表現を用いているところもおさえておきたい重要なポイントです。
つまり、SHR式という蓄熱式脱毛とは、つまるところ従来の光脱毛であるIPL式と同じキセノンという光源であることから、アプローチは違えど目的はあくまで「抑毛」ということになります。
クリニックにおける蓄熱式脱毛
一方、クリニックにおいてもSHR蓄熱式脱毛というものはあります。
医療における蓄熱式脱毛機はダイオードを使用していて、国内で唯一、2018年5月に厚労省の薬事承認がおりています。
医薬品や医療機器などの製造販売を厚生労働大臣が承認すること。「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(昭和35年法律第145号。略称、医薬品医療機器等法、薬機法)に基づき、企業から医薬品等の製造販売の承認申請を受け、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が有効性や安全性を審査し、薬事・食品衛生審議会の答申を経て、厚生労働大臣が承認する。
簡単にいえば、国のお墨付きをもらった蓄熱式脱毛機といえば、医療用であるダイオード式のSHRのみですよ。
ということです。
クリニックの蓄熱式脱毛の特徴
クリニックの蓄熱式脱毛は当然のことですが、医者やその指示を受けた看護師等でしか扱うことができない分、レーザーの威力もそれだけ高い、ということになります。
- 痛みに関しては少なからずある。
- やけど少ない。
- 毛周期はできれば成長期がのぞましい。
- メラニンの吸収率が低い(ゼロではない)
→色黒でもOKだが、日焼けはなるべく避ける。
→ほくろ、タトゥーは薄くなる可能性がある。
もちろん、上記以外の表現を用いるクリニックもあります。
エステとクリニックの蓄熱式の特徴を比べてみると、クリニックの方がリスクについてワントーン高く説明しているのがわかると思います。
例えば、あなたが何かのお薬を欲しいと思った時、薬局で買える薬よりも病院の診察を受けてもらう処方薬の方が効き目、薬の濃度が高いことから、なんとなく医療用の方が効果がありそうだと想像はつきますよね。
それと同じことが脱毛にもあてはまります。
よく、「クリニックとエステの比較」という趣旨の広告を見かけますが、医療機関での施術は効果がある分だけリスクもあると書かれることが多いです。
どんな薬にも副作用のリスクがあるのと同様、どんな医療行為にもリスクゼロはありません。
大切なのは、リスクが現実のものとなってしまった時にそれに対処できる術(すべ)を持っているのがクリニックだということ。
痛いのであれば麻酔クリームを塗る。
やけどになったらそのアフターケア治療をする。
そいうった”施術と対処”を両輪にその上に患者さんがいるというのがクリニックの当然のあり方だと私は思っています。
少なくとも、「どんな肌でもどんな毛でもOK」という程、医療用のものは甘くないですし、もしそんなことを平気でいうところがあったらエステでもクリニックでも疑うことです。
まとめ
SHR蓄熱式脱毛は歴史が浅く、まだ検証も充分ではありません。
これから先、SHRの研究が進むにつれて、もしかすると5年先10年先の未来では主流の脱毛技術として大成するかもしれません。
逆に廃れて過去の技術になるかもしれないです。
”新しい脱毛技術!最新式!バルジ!”という誘い文句にほいほい釣られるのではなく、あなた自身が「抑毛目的でエステのSHRを、脱毛目的でクリニックのSHRを選んだんだ。」という主体的な脱毛方法の選び方ができることを願っています。